サンタクロースが普段着だとこんな感じなのだろうかー。1998年、世界文化賞の取材で映画監督のリチャード・アッテンボロー氏にロンドン郊外の自宅で最初に会ったときにこう思った。
笑った口元からはすきっ歯がのぞき、紺色のニットには少々ではあるものの毛玉がついていた。サーやロード(卿)の称号を得ながらも「気取らない人」との第一印象は次の言葉で確かとなった。
「私はご覧のように丸顔で背も高くないので(俳優として)できる役は限られていました。髪も薄くなり、仕事もなくなってきた。このままではいけないと思って映画を製作する方に回ったのです」
俳優から監督への転身をためらいなく語った。
穏やかで温かな存在感を醸し出す一方、映画製作について語るときは一本の矢が貫かれたようなきりりとした表情をみせた。
「フィクションはあまり読みません。事実に興味があるのです。私たちの生き方や考え方に影響を与える、何かを成し遂げた人物を描きたい」。実在の人物を描くときには「徹底して事実にこだわった」。
「ガンジー」と並ぶ氏の代表作で南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)を描いた映画「遠い夜明け」の原作者、ドナルド・ウッズ氏は「映画化の依頼はたくさんあったが、事実だけを再現したいというアッテンボロー監督だから任せることができた」と話してくれた。
俳優・映画監督としての顔の一方、人道活動家としても知られていた。その原点は「ラジカルな家庭」(アッテンボロー氏)にある。宗教や人種の違いから来る差別を嫌悪していた両親は、ナチスの迫害で孤児になったユダヤ人の女の子2人を引き取り、家族として育てた。女の子に注ぐ母親の深い愛情を見て「人種なんて関係ないということと、愛情の素晴らしさを知った」と語っていた。
Source : http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140825/ent14082515090005-n1.htm