【話の肖像画】ミュージシャン ベン・E・キング(75)(2)
■坂本九さんとの不思議な縁
東日本大震災が起きたとき、津波の様子を自宅のテレビで見て心が痛みました。もし僕を必要としてくれるならいつでも駆けつけたい、「スタンド・バイ・ユー」(そばにいる)と被災者に伝えたい、元気づけたいと思いました。そこで日本のレコード会社から、震災を支援する企画アルバムの制作を打診されて、喜んで引き受けました。この年は「スタンド・バイ・ミー」発表から50年、米同名映画の公開から25年という節目でもあり、すぐニューヨークでレコーディングに入りました。
〈ユニバーサル ミュージックが企画したアルバム「ディア・ジャパン」は震災が起きた平成23年11月に発売。「スタンド・バイ・ミー」の日本語バージョンと、坂本九さんの「上を向いて歩こう」のカバーに挑戦。「SUKIYAKI」の題名で、これまでで日本人唯一の全米ビルボード誌ナンバーワンヒットとなっているこの曲も、日本での発表から50年となる節目だった〉
「SUKIYAKI」と坂本さんのことは、1963年に米国でヒットしたときから知っていました。命が宿った曲と出合うと歌いたくなるもので、心が温まる歌詞は永遠に人々の心にとどまります。日本語で歌うのはかなり苦労しましたが。2年前の東京公演で、未亡人で女優の柏木由紀子さんを招待したら、そのお礼に柏木さんが僕を自宅に招いてくれました。
〈坂本さんとベンさんには「他人を思いやる優しい気持ちを持つミュージシャン」という共通項があった。柏木さん、その次女で女優の舞坂ゆき子さんと、生前のCDや写真を前に思い出話に花が咲いた。軽食を共にした滞在時間は予定をはるかにオーバー。柏木さんはベンさんの印象を「とても優しいおじさま」と語る〉
坂本さんは(昭和60年夏の)飛行機事故で亡くなり会う機会がなかったのは残念。僕がソロになる前にいたドリフターズで歌った「ラストダンスは私に」をカラオケでよく歌ってくれていたそう。「ディア・ジャパン」にも収録した曲なのでうれしかったですね。
〈同じころにNHKのドキュメンタリー企画で東北地方の被災地をいくつか訪ねた。津波で流され、仮店舗で営業するジャズ喫茶や震災後の自粛ムードの中、あえて活動を続けた東北大学のジャズオーケストラ…。「音楽の力」で立ち直ろう、被災者を元気にしようと取り組む姿勢に強い感銘を受けた〉
津波が襲った地域を見て、現実に起きたこととは思えず、僕が歩いてよいのだろうかと複雑な思いがしました。皆さんの抱える問題も見えてきました。支えになるのが音楽の力。心を動かし、癒やし、何かをもたらしてくれます。自然は大きな仕打ちをしたけれど回復はできます。亡くなった大切な人たちは、あなたの心の中にいるのです。(聞き手 藤沢志穂子)
Source : http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/140429/ent14042903220002-n1.htm